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エル ニョスキ店主の
スペイン バルセロナでの料理修行体験記。
といっても、
料理のお話だけではありません!
時間があるときに少しずつアップさせてもらいます♪
※当ブログの無断転載はしないでくださいね!!
でもまぁ転載するほどの大作でもありませんけど(笑)
2024/11/21 (Thu)
×
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2012/12/05 (Wed)
「ルックラ」での仕事も、あっという間に一年が過ぎました。
毎日ただひたすら「忙しい!!」という状況に追われていましたが、それでも少し落ち着き始めてきたころ、一年を境にオープンメンバーが次々と辞めてしまいました。
その頃、英ちゃんも秋にはここを辞めて日本に帰ると言ってました。
しかし。
お店の空気が何か変だ。
日本人の俺でも判るくらいにお店の空気がどんよりしていました。
忙しくて繁盛している店にも関わらず、急にレストランの支配人も辞めさせられたり、とにかくお店の全体に変な雰囲気が漂っていました。
すると、シェフも店を辞めるという噂が夏頃に皆の間で広まりました。
「なんでそんな事になっちゃうの? お前、何か知ってる?」
俺はすかさずエクトールに聞いてみましたが、彼は知っているけど知らないようなそぶりを見せます。
というか、「今それは話してはいけないタブーな話」的な。
この頃レストランはさらに事業を拡大し始めていて、宴会やパーティーも受けるようになり、別に調理場も設け従業員もさらに雇うようになり、店がどんどん大きくなろうとしていた矢先でした。
翌日になって、やっとエクトールが俺に小声で言いました。
「今はまだ話せないんだけど、近いうちにゆっくり話すからさ」
「え、何の話だよ?」
「まぁ、仕事の話だよ。今は言えないからまた今度、な?」
何のことだかさっぱり分からなかったが、彼の言うとおりにしました。
だけど、そう言われるとどうしても気になってしまい、「頼むから!」とお願いして、部屋でゆっくり話しを聞かせてもらうことにした。
「実はさ、秋にシェフが辞めるんだよ」
「うん、噂では聞いてたけど。でも、どうして?」
「上とモメたみたいだね。数字が出ないって」
「は?」
そんな話はまずあり得ませんでした。
毎月、レストランと宴会で億という単位の売り上げを出しているほど忙しい店で、そんなことがどうして起こるのか不思議で仕方がありません。
当時、経理を知らない俺でさえそれはおかしいと。
いや、誰でもそう思いますって。
どおりで急に数名辞めていったワケだ。
それで、数字を出せないシェフが責められるような形で店を辞めさせられる、というのだ。
だが、そこには違う話がありました。
エクトールは俺にこう続けます。
「だけどさ、もうシェフは次に行くところが決まってるんだって。そこで、うちらも引っ張って行くっていう話。俺もよく分からないんだけど、今度一緒にシェフとうちらの三人で食事に行こうって言ってるから、そのときにゆっくり話を聞こうよ。詳しい話は聞いてないんだけど、なんでも五つ星のホテルらしいよ」
「テツには説明したよ」とエクトールはシェフに話していたみたいで、調理場を通るときシェフはいつも俺に目で合図をするようになった。
シェフは小声で俺に、「そういう話だから、また今度ゆっくりな」。
一週間後、三人で夕食をしました。
シェフも一応有名人なので、あまりバルセロナ近郊での食事をするのは見られたくないらしく、ジローナの山奥にあるミシュラン一つ星のレストラン「Can Jubany」まで行きました。
別にそんなに山奥でなくても(笑)
俺はエクトールの運転で一緒に向かい、シェフとは現地で合流。
そこで三人で食事を始める前に、ジョアンの口から新しい仕事の話を聞かされた。
「実は、ジローナに五つ星のホテルがあって、そこのシェフとして働きに行くんだけれど、そこで今まで働いてたシェフを始めキッチンスタッフが今年いっぱいで抜けるから、来年の一月からお前たちに一緒に来て欲しいんだ」
「やった! 我慢した甲斐があった!!」
一瞬、心の中で正直にそう思いました。
今までシェフと一緒に仕事をしてきたコックの中で、エクトールと俺は一番長い間一緒に仕事をしていて、ある意味彼の右腕と左腕でした。
「ルックラ」で働き始めていきなりあんなセクション分けをされて、それでもうちらは我慢してここまでやってきました。そのかいがあったな、とエクトールと目を合わせながら喜びました。
前々からエクトールとはシェフの話をしていました。
「何で彼には、右腕がつかないんだろうね?」
すごい腕を持った料理人も、彼と一緒になってある程度すると辞めてしまう。今まで彼と働いたことのある人にもいろいろと彼の噂話を聞いた。いいことばかりではなかったが、まぁ、相性の問題もあるとは思うが、俺には不思議でした。
確かに、よく酒を飲む人ではあったけど(笑)
シェフによると、そのホテルのオーナーは別にもう二つジローナにホテルを持っていて、これからいろいろな事業が進んで行くという話でした。
うちら二人とは別に、英ちゃんやエクトールと付き合いの長いジョルディ、「カル ロス」で一緒に働いていて俺にいろいろと教えてくれたダビ、それとベネズエラから料理の勉強に来ていて半年前くらいに「ルックラ」に入ってきたエンリケ、その彼女で俺のコール場での最初のアシスタントになったタティアナ。その面子を引き連れて行きたいという事でした。
シェフは更に話を続けます。
「最初はつらいと思うよ。もうオープンして十年になるホテルで、そこの仕事のシステムが完全に出来上がってる。そこに入るってことはかなり難しいことだから、覚悟だけはしておいて欲しい。そのホテルでは今までの料理とは違った、ガストロノミーな料理を提供するホテルだから、より楽しい仕事ができるかもな。今度お前たちと一緒にそのホテルに行って案内するし、支配人にも紹介するからな」
とにかく、今まで働いていた店は、「スピードだけが命、味は二の次」くらいに忙しかったので、正直コックとしては働きたくない環境ではありました。
もちろん、味もスピードを同じくらいのクオリティを求められていましたけど。
しかし実際は、ああいう仕事をしたおかげで自分で仕事のリズムも作れるようになったし、どんなに忙しくても少々なことでは忙しいと思えなくなったし、へこまなくもなりました。
それくらいあの店は「忙しかった」というよりか、「おかしかった」んです(笑)
だからジョアンの言っている「より楽しい仕事」」というのは、「いい環境で」という意味で、「楽しく仕事ができる」と言っているのだろうと感じました。
食事も済ませジョアンと別れ、帰りの車の中でエクトールと今までを振り返りながら早速今後の話を進めました。
「でも、皆すぐに辞めるわけにはいかないよなぁ。英ちゃんはもうすぐ辞めて、近くの日本料理屋に働きに行って日本に帰るお金貯めるって言ってたけど、誘ったら一緒に来るかな?」
実際、英ちゃんにその話をしてみても、彼は日本に帰るつもりでいたので乗り気ではありませんでした。
実際に働くレストランを見てみないとなんとも言えないし。それは俺も一緒でした。
先にエクトールと俺がそのホテルを見学しに行って、それからもう一度考えようということになりました。
ちなみに余談ですが、
「ルックラ」でなぜそんなに数字がきちんと出なかったかというと。
なんと、
店のオーナーが不正に店の売り上げを着服していたらしいのです。
堂々と経理の人に「それじゃうまくやっといてね」なんて言っていたらしい。
しかも、「億」という単位で。
経理のマヌエルも毎晩遅くまで残って修正しようとしていましたが、それだけの大金をそう簡単に埋められるはずがない、というか不可能です。
「業者にお金が払えない」なんて噂も出ていたから何かおかしいとは思っていましたが、「やっぱりそうだったか」という感じでした。
あ
れだけ忙しい店で皆でオープンから頑張ってきたのに、その話を聞いた途端一気にやる気が失せてしまったんです。
夏も過ぎ、秋になる頃にジョアンが店を辞めました。ジ
ョアンの後釜に、うちらと一緒にコックとして始めたうちの一人、マルクがその店のシェフとして皆を引っ張る事になりました。
それまでに俺は店のセクションを一通り任せてもらい、エクトールは宴会の調理場を仕切っていたが、マルクが調理場を引っ張るようになり始めてから、少しずつ不調和音が調理場に響き始めました。
しかも、マルクとエクトールは次第にどんどん仲が悪くなっていき、皆の前で大喧嘩を始めたりと、なんとも気まずい空気。
「俺もそろそろ店、辞めようかなぁ」
10月になって、店の空気がさらに悪くなった。9月から新しく支配人が入ってきたが、英ちゃんと俺の二人を利用して、店内に日本料理ブースを設けてそこでうちらを日本料理を作らせるために働かせようとしていたりと話が違う方向に進んできたので、これはもう辞めるしかないと俺の中で話はまとまっていた。
実際に料理の勉強に来ているのに、それじゃ意味が無くなってしまう。それとは別に、マルクも俺がエクトールと仲が良いため俺との距離を置き始めてきました。しかも、オープンメンバーはうちら3人だけになってしまったのに、彼の下に他の人を2番手に付けたので、そりゃさすがに俺も気分悪くなっちゃいますよね。
さらに彼は新しい支配人へのゴマすりで毎日忙しそうにしています。
俺はもともと、ゴマすりや人のご機嫌を伺うようなことは嫌いなので、次第に俺は調理場の輪から外れるようになっていきました。
淡々と料理を作るだけです。
あーつまんない(笑)
先ほども言いましたが、調理場にはオープンから残っているコックはマルクと俺、それに宴会の調理場にいるエクトールだけでした。調理場の中を見渡しても、明らかにオープン当初と雰囲気が違います。正直、やる気の無いようなコックでいっぱいでした。
ジョアンはすでにいない。英ちゃんも辞めるしジョルディも辞めたし、エクトールも宴会の調理場にいるから、話をしたくても話せる人間が身近に一人もいない。
しかも、周りはダラダラと仕事してて、プロ意識のかけらもない。
そんな環境は俺にはとても窮屈で、これでは自分の志気も下がると思い、年末を待たずに11月で店を辞める事にしました。
日に日に志気は下がって、やる気も半減していました。
「エクトール。俺、先に辞めるわ。もう我慢できないや」
「来年まであと少しあるけど、どうするの? 俺は年末までいるぞ?」
「とりあえず部屋でなんもしないでゆっくり休んでるよ。引越しもするだろ?」
11月15日付けで「ルックラ」をやめる事になり、年明けまでの一ヶ月半、ゆっくり休む事にしました。
店を辞めたのはいいですが、まだなんとなく落ち込んでいました。
いつからか、自分の運が下がりつつあったのを実感していて、どうしても前向きになれない自分がそこにいました。
こんなにへこんだのって、本当に久しぶりでしたね。
こんなのって本来の自分の姿ではないし、こんな姿は誰にも見られたくないし、早く元に戻りたい。変わりたい。
なんとかここで気合を入れ直して、来年は新たな気持ちで新しい職場で心機一転して頑張ろう。
そう思って、色々と考えた結果、
今までもこれからも経験しそうにないであろう、
スペインで当時流行していた「ぬりえ」を腕に入れてもらいに行く事にしました。
当時、まだまだガキんちょだったからそれくらいしか思いつかなかったんですよ(笑)
★★★つづく★★★
毎日ただひたすら「忙しい!!」という状況に追われていましたが、それでも少し落ち着き始めてきたころ、一年を境にオープンメンバーが次々と辞めてしまいました。
その頃、英ちゃんも秋にはここを辞めて日本に帰ると言ってました。
しかし。
お店の空気が何か変だ。
日本人の俺でも判るくらいにお店の空気がどんよりしていました。
忙しくて繁盛している店にも関わらず、急にレストランの支配人も辞めさせられたり、とにかくお店の全体に変な雰囲気が漂っていました。
すると、シェフも店を辞めるという噂が夏頃に皆の間で広まりました。
「なんでそんな事になっちゃうの? お前、何か知ってる?」
俺はすかさずエクトールに聞いてみましたが、彼は知っているけど知らないようなそぶりを見せます。
というか、「今それは話してはいけないタブーな話」的な。
この頃レストランはさらに事業を拡大し始めていて、宴会やパーティーも受けるようになり、別に調理場も設け従業員もさらに雇うようになり、店がどんどん大きくなろうとしていた矢先でした。
翌日になって、やっとエクトールが俺に小声で言いました。
「今はまだ話せないんだけど、近いうちにゆっくり話すからさ」
「え、何の話だよ?」
「まぁ、仕事の話だよ。今は言えないからまた今度、な?」
何のことだかさっぱり分からなかったが、彼の言うとおりにしました。
だけど、そう言われるとどうしても気になってしまい、「頼むから!」とお願いして、部屋でゆっくり話しを聞かせてもらうことにした。
「実はさ、秋にシェフが辞めるんだよ」
「うん、噂では聞いてたけど。でも、どうして?」
「上とモメたみたいだね。数字が出ないって」
「は?」
そんな話はまずあり得ませんでした。
毎月、レストランと宴会で億という単位の売り上げを出しているほど忙しい店で、そんなことがどうして起こるのか不思議で仕方がありません。
当時、経理を知らない俺でさえそれはおかしいと。
いや、誰でもそう思いますって。
どおりで急に数名辞めていったワケだ。
それで、数字を出せないシェフが責められるような形で店を辞めさせられる、というのだ。
だが、そこには違う話がありました。
エクトールは俺にこう続けます。
「だけどさ、もうシェフは次に行くところが決まってるんだって。そこで、うちらも引っ張って行くっていう話。俺もよく分からないんだけど、今度一緒にシェフとうちらの三人で食事に行こうって言ってるから、そのときにゆっくり話を聞こうよ。詳しい話は聞いてないんだけど、なんでも五つ星のホテルらしいよ」
「テツには説明したよ」とエクトールはシェフに話していたみたいで、調理場を通るときシェフはいつも俺に目で合図をするようになった。
シェフは小声で俺に、「そういう話だから、また今度ゆっくりな」。
一週間後、三人で夕食をしました。
シェフも一応有名人なので、あまりバルセロナ近郊での食事をするのは見られたくないらしく、ジローナの山奥にあるミシュラン一つ星のレストラン「Can Jubany」まで行きました。
別にそんなに山奥でなくても(笑)
俺はエクトールの運転で一緒に向かい、シェフとは現地で合流。
そこで三人で食事を始める前に、ジョアンの口から新しい仕事の話を聞かされた。
「実は、ジローナに五つ星のホテルがあって、そこのシェフとして働きに行くんだけれど、そこで今まで働いてたシェフを始めキッチンスタッフが今年いっぱいで抜けるから、来年の一月からお前たちに一緒に来て欲しいんだ」
「やった! 我慢した甲斐があった!!」
一瞬、心の中で正直にそう思いました。
今までシェフと一緒に仕事をしてきたコックの中で、エクトールと俺は一番長い間一緒に仕事をしていて、ある意味彼の右腕と左腕でした。
「ルックラ」で働き始めていきなりあんなセクション分けをされて、それでもうちらは我慢してここまでやってきました。そのかいがあったな、とエクトールと目を合わせながら喜びました。
前々からエクトールとはシェフの話をしていました。
「何で彼には、右腕がつかないんだろうね?」
すごい腕を持った料理人も、彼と一緒になってある程度すると辞めてしまう。今まで彼と働いたことのある人にもいろいろと彼の噂話を聞いた。いいことばかりではなかったが、まぁ、相性の問題もあるとは思うが、俺には不思議でした。
確かに、よく酒を飲む人ではあったけど(笑)
シェフによると、そのホテルのオーナーは別にもう二つジローナにホテルを持っていて、これからいろいろな事業が進んで行くという話でした。
うちら二人とは別に、英ちゃんやエクトールと付き合いの長いジョルディ、「カル ロス」で一緒に働いていて俺にいろいろと教えてくれたダビ、それとベネズエラから料理の勉強に来ていて半年前くらいに「ルックラ」に入ってきたエンリケ、その彼女で俺のコール場での最初のアシスタントになったタティアナ。その面子を引き連れて行きたいという事でした。
シェフは更に話を続けます。
「最初はつらいと思うよ。もうオープンして十年になるホテルで、そこの仕事のシステムが完全に出来上がってる。そこに入るってことはかなり難しいことだから、覚悟だけはしておいて欲しい。そのホテルでは今までの料理とは違った、ガストロノミーな料理を提供するホテルだから、より楽しい仕事ができるかもな。今度お前たちと一緒にそのホテルに行って案内するし、支配人にも紹介するからな」
とにかく、今まで働いていた店は、「スピードだけが命、味は二の次」くらいに忙しかったので、正直コックとしては働きたくない環境ではありました。
もちろん、味もスピードを同じくらいのクオリティを求められていましたけど。
しかし実際は、ああいう仕事をしたおかげで自分で仕事のリズムも作れるようになったし、どんなに忙しくても少々なことでは忙しいと思えなくなったし、へこまなくもなりました。
それくらいあの店は「忙しかった」というよりか、「おかしかった」んです(笑)
だからジョアンの言っている「より楽しい仕事」」というのは、「いい環境で」という意味で、「楽しく仕事ができる」と言っているのだろうと感じました。
食事も済ませジョアンと別れ、帰りの車の中でエクトールと今までを振り返りながら早速今後の話を進めました。
「でも、皆すぐに辞めるわけにはいかないよなぁ。英ちゃんはもうすぐ辞めて、近くの日本料理屋に働きに行って日本に帰るお金貯めるって言ってたけど、誘ったら一緒に来るかな?」
実際、英ちゃんにその話をしてみても、彼は日本に帰るつもりでいたので乗り気ではありませんでした。
実際に働くレストランを見てみないとなんとも言えないし。それは俺も一緒でした。
先にエクトールと俺がそのホテルを見学しに行って、それからもう一度考えようということになりました。
ちなみに余談ですが、
「ルックラ」でなぜそんなに数字がきちんと出なかったかというと。
なんと、
店のオーナーが不正に店の売り上げを着服していたらしいのです。
堂々と経理の人に「それじゃうまくやっといてね」なんて言っていたらしい。
しかも、「億」という単位で。
経理のマヌエルも毎晩遅くまで残って修正しようとしていましたが、それだけの大金をそう簡単に埋められるはずがない、というか不可能です。
「業者にお金が払えない」なんて噂も出ていたから何かおかしいとは思っていましたが、「やっぱりそうだったか」という感じでした。
あ
れだけ忙しい店で皆でオープンから頑張ってきたのに、その話を聞いた途端一気にやる気が失せてしまったんです。
夏も過ぎ、秋になる頃にジョアンが店を辞めました。ジ
ョアンの後釜に、うちらと一緒にコックとして始めたうちの一人、マルクがその店のシェフとして皆を引っ張る事になりました。
それまでに俺は店のセクションを一通り任せてもらい、エクトールは宴会の調理場を仕切っていたが、マルクが調理場を引っ張るようになり始めてから、少しずつ不調和音が調理場に響き始めました。
しかも、マルクとエクトールは次第にどんどん仲が悪くなっていき、皆の前で大喧嘩を始めたりと、なんとも気まずい空気。
「俺もそろそろ店、辞めようかなぁ」
10月になって、店の空気がさらに悪くなった。9月から新しく支配人が入ってきたが、英ちゃんと俺の二人を利用して、店内に日本料理ブースを設けてそこでうちらを日本料理を作らせるために働かせようとしていたりと話が違う方向に進んできたので、これはもう辞めるしかないと俺の中で話はまとまっていた。
実際に料理の勉強に来ているのに、それじゃ意味が無くなってしまう。それとは別に、マルクも俺がエクトールと仲が良いため俺との距離を置き始めてきました。しかも、オープンメンバーはうちら3人だけになってしまったのに、彼の下に他の人を2番手に付けたので、そりゃさすがに俺も気分悪くなっちゃいますよね。
さらに彼は新しい支配人へのゴマすりで毎日忙しそうにしています。
俺はもともと、ゴマすりや人のご機嫌を伺うようなことは嫌いなので、次第に俺は調理場の輪から外れるようになっていきました。
淡々と料理を作るだけです。
あーつまんない(笑)
先ほども言いましたが、調理場にはオープンから残っているコックはマルクと俺、それに宴会の調理場にいるエクトールだけでした。調理場の中を見渡しても、明らかにオープン当初と雰囲気が違います。正直、やる気の無いようなコックでいっぱいでした。
ジョアンはすでにいない。英ちゃんも辞めるしジョルディも辞めたし、エクトールも宴会の調理場にいるから、話をしたくても話せる人間が身近に一人もいない。
しかも、周りはダラダラと仕事してて、プロ意識のかけらもない。
そんな環境は俺にはとても窮屈で、これでは自分の志気も下がると思い、年末を待たずに11月で店を辞める事にしました。
日に日に志気は下がって、やる気も半減していました。
「エクトール。俺、先に辞めるわ。もう我慢できないや」
「来年まであと少しあるけど、どうするの? 俺は年末までいるぞ?」
「とりあえず部屋でなんもしないでゆっくり休んでるよ。引越しもするだろ?」
11月15日付けで「ルックラ」をやめる事になり、年明けまでの一ヶ月半、ゆっくり休む事にしました。
店を辞めたのはいいですが、まだなんとなく落ち込んでいました。
いつからか、自分の運が下がりつつあったのを実感していて、どうしても前向きになれない自分がそこにいました。
こんなにへこんだのって、本当に久しぶりでしたね。
こんなのって本来の自分の姿ではないし、こんな姿は誰にも見られたくないし、早く元に戻りたい。変わりたい。
なんとかここで気合を入れ直して、来年は新たな気持ちで新しい職場で心機一転して頑張ろう。
そう思って、色々と考えた結果、
今までもこれからも経験しそうにないであろう、
スペインで当時流行していた「ぬりえ」を腕に入れてもらいに行く事にしました。
当時、まだまだガキんちょだったからそれくらいしか思いつかなかったんですよ(笑)
★★★つづく★★★
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