「ぼくのおみせ」ができるまで 忍者ブログ
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エル ニョスキ店主の スペイン バルセロナでの料理修行体験記。 といっても、 料理のお話だけではありません! 時間があるときに少しずつアップさせてもらいます♪ ※当ブログの無断転載はしないでくださいね!! でもまぁ転載するほどの大作でもありませんけど(笑)
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2009/07/26 (Sun)
前回、ちょっとだけ触れておきましたが、
「パステレリア」とは、スペイン語で「ケーキ屋」のことを言います。
 
カルデデウに「ピエジャ」という小さなケーキ屋があります。
スペインではどこの町や村にもある、パンも焼く、ごく普通のケーキ屋さんです。
ケイゴさんは、そこの菓子職人のジョゼップと若い頃一緒にお菓子を作っていたそうです。
 
前からそのケーキ屋がずっと気になっていまして、

「いつかそのケーキ屋を紹介してもらって、そこでケーキとかお菓子とか、郷土菓子をいっぱい勉強させてもらおう!」
と思っていて、
ある日ケイゴさんにお願いしてみました。
 
語学学校に行って、ケイゴさんの店にもいて、自分が空いている時間といえば朝だけでしたが、
給料もいらないし、短い間でもいいから時間を有効に使いたかったんです。
 
そして、そのパステレリアの家族をケイゴさんに紹介してもらい、
日本に一時帰国するちょっと前から,スペインに戻ってからも、
毎日、午前中だけ、学校に行く前にそこで勉強させてもらうことになりました。
 もちろん、タダ働きです。
 
「ピエジャ」は、ジョゼップとパルミラの夫婦二人で切り盛りしているお店で、忙しいときは他に売り子のお姉さんが二人と中を手伝うおばさんが一人いました。

それと、「補欠要員」の俺です(笑) 
 
俺は毎朝七時前に起きてパステレリアまで行くのですが、
とにかくスペインは日本と違って日の出が遅いんです。
さらに、街灯は日本ほど明るくないので、そんな早い時間にケイゴさんの家から出ると、ほとんど真っ暗で何にも見えません。
そんな坂道を、毎日毎日自転車で降りてパステレリアまで行きました。
パステレリアは、ケイゴさんの店から歩いて二分で着くところにあるので、わざわざ早起きして家から行かずに、たまに前日からレストランに泊まって、並べた椅子の上に寝て、それで朝、ケイゴさんのお店から歩いて行くようになりました。
 
レストランに「お泊り」する夜、
シャワーは一体どうしていたかというと?
 


体は濡らしたタオルで拭き、
頭や顔は「トイレの洗面台」で洗ってました。




懐かしい思い出です(笑)
 
 
さて。
パステレリアでの研修が始まります。


店の厨房の真ん中の壁にテレビが置いてあります。

スペインテレビの朝のニュースの声が聞こえる中、
 
「おはよう、ジョゼップ」
 
「おはよ、テツ。コーヒー入れてくれる?」
 
毎朝ジョゼップのこの一言から始まります。
カフェテラの蓋を外して、挽いてあるコーヒー豆をそこに詰め、カフェテラの下の部分に水を入れて火にかける、「自家製エスプレッソコーヒー」。
 
それまでカフェテラでコーヒーなんて入れたことありませんでしたから、お湯が沸いたタイミングが良く分からず、最初の頃はしょっちゅうコーヒーを吹きこぼしていました(笑)
 
朝一でコーヒーを入れ、前日の残り物の菓子パンを口に咥えながらその日の準備に取り掛かります。
クロワッサンや菓子パンを焼いて朝のスタンバイを終わらせてから、それからゆっくりとうちらの朝食です。

いつもの朝ごはんは、「ボカディージョ」。
バゲットパンを横半分に切り、そこへ擦ったトマトにオリーブオイルを混ぜたものを塗って、そこに具を挟みます。それがオムレツだったり、腸詰めだったり、生ハムだったり。
それがスペインのサンドイッチ「Bocadillo(ボカディージョ)」です。

なんでも、トマトを塗って食べるのは、
スペインの中でもカタルーニャ地方が始まりらしいです。

「スペインで内戦のあった時代、すごく貧しく食品もなかなか調達できなくて、パンも硬くなったものしか手に入らなくて、そのときは、その硬くなったパンに、身近にあったにんにくとトマト、オリーブオイルを塗って柔らかくして、食べられるようにしてから食べた」

というのが起源だそうです。なんとも歴史を感じる食べ物です。

今ではそれを一つの「味覚」として、レストランでは丸のにんにくとトマトを軽くトーストしたバゲットや、カンパーニュパンに塗ってそのまま食べたり、具を乗せたりして食べています。

パステレリアで皆と一緒に朝食を取っているときにいろんな会話をするのですが、ここカタルーニャでは、「カタラン語」という、スペイン語とは違った言語を使って話しているので、最初はそれが全く理解できなくて、ただ黙っているしかなかったんですよ。
 
俺もいじけ気味に、
「スペイン語はおろか、カタラン語で話されちゃこっちは何にも言えないよ。ただでさえスペイン語も全く話せないのに!」
 
そんな中ジョゼップは俺に気を遣ってくれて、スペイン語の動詞をいつも原形で話してくれます。スペイン語は、一つの動詞が六通りにも変化するので、慣れるまでの間はかなり苦労します。原形で分かりやすく話してくれるのは嬉しいのですが、もちろんそれではいつまでたっても勉強になりません。そんなことをパルミラもジョゼップに言っていたようです。
パルミラは、俺と話すとき、どんなに俺が分からなくてもちゃんと動詞も変化させて、そのときの状況によって使い分けてしゃべってくれていました。
でも、その当時の俺はそれについてもいけませんでしたが(笑)
 
そして朝食を済ませた頃、学校に行く時間になります。

いつもギリギリまで食事したり彼らと話していたりするので、
店を出るといつもダッシュで駅まで向かい、電車に飛び乗ります。
平日はこんな日が続きました。
週末は学校も休みなので、
昼、ケイゴさんの店がオープンするまでの午前中は、
とにかくパステレリアに通っていろいろと勉強させてもらいました。
 
パン、クロワッサン、パイ生地、菓子パンや、地元に古くから伝わるお菓子やケーキ。
それら全てを昔のまんまの作り方で教わりました。
未だにスペインでは、日本ではもうほとんど見かけない「フルーツの砂糖煮」の缶詰を使っていたりするし、スポンジケーキの生地にはレモンエッセンスとか着色料をガンガン入れてます。
 
「こんなの、日本じゃもうとっくに廃れてるよなぁ」
そう思いましたが、あえてこの作り方を教わることに没頭します。
 
「こういう古いお菓子なんて、日本で出す店なんてないだろうなぁ。
よし、それならいつか俺が出してやる!!」と、いつも夢見ていました。
 
最近の「作り方」というのは、改良に改良を重ねて考えられた「作り方」であって、それよりも、せっかく今実際にスペインにいるんだから、俺はあえて、昔から伝えられている古臭い作り方を教わりたかったのです。

昔から変えずに、同じ方法で作られていることに感動すら覚えました。

その昔からのやり方を教えてもらえるのだから、俺にとってはこの上ない満足感でいっぱいです。


そんなある日、
語学学校のクラスメートが俺を尋ねてケイゴさんの店まで食事に来てくれました。
そのときに持ってきてくれた手土産が、「Virutas(ビルータス)」。
「木こりの切りくず」という意味ですが、切りくずのようにクルクルと丸まったクッキーをチョコレートでコーティングしているお菓子です。

早速俺は「ピエジャ」にビルータスを持って行き、
 
「ジョゼップ、なんでこの店にこれ置いてないの? これ一度作ろうよ。俺に作り方教えてよ!」
と彼に言うと、なぜかジョゼップはあまりいい顔はしません。
一方のパルミラは、それを作って欲しくてジョゼップに何度もお願いしていたそうですが、今までほとんど作ってくれなかったと、俺にため息交じりに笑いながら話していました。
 
「う~ん。なんでだろうねぇ?」
 
なぜかと言いますと、
単純にそれが出来上がるまでの工程が結構面倒くさいらしく、今まで作るのを敬遠していたそうです。
なんていい加減な菓子職人(笑)
しかも、
「暑い時期にチョコを使ったお菓子はすぐに溶けちゃう」などと、確かにそうかもしれませんが、子供にしか利か
ないような言い訳を言っていたので、

「それじゃ暑くなる前に作ろうよ」と、夏前に半ば強引にお願いして作ってもらうことになりました。

もちろんジョゼップはいい顔してません(笑)
 
クッキーの生地を鉄板に細長く絞って、それが焼きあがったらすぐに丸い棒を使って「きこりくず」のように斜めにクルクル巻いて、一度そのクッキーを冷まして固めてから、チョコレートでコーティングします。
俺も一緒になって生地を絞って、焼きあがってすぐ生地を手に取って、

「あちっ! あっち~!!そっか、これだからやりたくなかったんでしょ?」

とジョゼップに言いながら、バターの香りがいい焼きたてのクッキーを、クルクルと丸め続けます。
実際、最初に焼いてあるクッキーは上手く丸められるのですが、手際が良くないと次第に丸める前にクッキーが冷めて固まってくるので、相当スピードを上げて巻かないと、最後のほうは丸める前に固まってしまうのです。それを手際よく何百個も作るんだから、ジュゼップの気持ちも分からなくはありません。
実際、出来たビルータスを店頭に飾ってみると、あれよあれよと言ううちにすぐに売切れてしまい、このローテーションを毎週の仕込みの中に組み込むのは相当難しいんだなぁと俺も実感しました。

「何日もかけて作ったのにすぐになくなっちゃうんじゃ、他の仕事もできないし、そりゃぁ仕方ないのかな? ジョゼップ一人で全部作ってるし」

ジョゼップの言いたいことも分かる気がするのですが、でも売れるんだから作らなきゃ。
 
ですが。


それ以降、

ピエジャの店頭に
「ビルータス」はお目見えしていません。

 





まぁ無理ないか(笑)


★★★つづく★★★
 
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更新が随分と遅くなってしまいまして、
本当にどうもすみませんでした!


なぜかここ最近、

「ブログ読んでます!」と言ってくださるお客さん達が、今までにないペースで増えています。

少しずつですが、このブログを読んでくれている方が増えているのを実感していますし、すごく嬉しいです。

言われる度に、本当に色んな方々が読んでくれているんだなぁと、
実は店主かなり感動しています(笑)

ですが、
最近あまりにもたくさんの方に言っていただいている
「ブログ読んでます!」という言葉が


「早く更新してよ!」にしか聞こえなくなったのも事実です(笑)


言い訳は何も言いません。

今まで通りマメに更新しますから
これからも楽しく読んでくださいね!(笑)
ニョスキ店主 2009/07/26(Sun)23:32:42 編集

ニョスキのデザートがおいしいのはこんな風に修行を積んでいたからだったのですねー。
あぁ店主さんの桃のタルトがまた食べたいです・・・
うちだ 2009/07/27(Mon)11:11:37 編集

今、バルセロナについて検索していたところ、このブログにたどり着きました。「ケイゴ」って、奥さんがスペイン人の方ですよね?
ケイゴおじちゃんは、私の父の幼馴染です。先日も私の誕生日を覚えていてくれて、バルセロナから電話がありました。
おじちゃんは私が生まれたときからかわいがってくれました。独身のころは、カルデデウに一人で行き、滞在しました。
私が行くと、いつもレストランを閉め、いろんなところに連れて行ってくれます。
以前に来た日本人の話もちらほらしていたから、きっと、主さんのことも話しに上っていたかもしれません。
カルデデウは、バルセロナから少し離れているのでなかなか日本人観光客が足を運びにくいですが、地球の歩き方などでぜひとも紹介していただいて、お店が繁盛するといいな~と思っています。
BEBE 2009/08/05(Wed)14:01:31 編集

僕のブログを読まれていたんですね(笑)

実はですね、
まだまだニョスキでは作っていないお菓子がたくさんあるんですよ。
しかし教えてもらったものがあまりにも多くて、そこまでたどり着けないのが現状です。

が、
先は長いので
これからも小出しでいきますね(笑)
ニョスキ店主 2009/08/05(Wed)23:34:50 編集

ついに!!!
ケイゴさんのお知り合いの方が!!

改めまして、はじめまして!
ひょっとしたら、
僕もあなたのお話を
ケイゴさんから聞いたことがあるかもしれませんね!

これからも
お時間のあるときに
こちらに遊びに来てください♪



いやぁ、

しかし世間は狭い!!!
ニョスキ店主 2009/08/05(Wed)23:44:11 編集

午前中、むさぼり読んでました(笑)
いろんなこと経験して、大きくなってんだろうなぁとニヤニヤしながら読んでました。
なかなかお店には行けないけど、いつか必ず店主の料理を食べに行くからね。
えっこ 2009/08/24(Mon)11:46:58 編集

はて、どなたでしょうか(笑)

おそらく当たりだと思いますが、
広島で一緒に仕事したことありますか?





当たりなようですね(笑)
ニョスキ店主 2009/10/22(Thu)04:50:07 編集

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