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スペインの飲食店では、チップを『払う』というか『置いていく』習慣があります。
スペイン語で「Bote(ボテ)」や「Propina(プロピナ)」と言います。
レストランへ食事に行ったりすると、お会計を払った後のおつりの小銭をそのままチップとして置いて帰ったり、食事の金額の一割くらいや、たまに「ドン」と結構な額を置いて帰っていくご機嫌なお客さんもいました。
スペインは日本のお金より小銭の種類が多く、
『おつりを小銭でもらっていると財布がパンパンになってしまうのが嫌だから』
チップとして置いて行くのか
もしくは、そのお店に対しての気持ち良く食事できたことに対してのお礼の意味も込めてチップを置いていくのか
日本で言う
『あ、おつりは結構です』が、スペインでは当たり前のような習慣です。
今考えると、当時のスペインはある意味『バブル期』だったのでしょうか。
それはさておき、チップです。
お客さんからいただいた一週間分のチップは、
翌週になると全てまとめられて、従業員一人ひとりに均等に分けられます。
端数は翌週に持ち越しです。
ルックラでは、昼夜合わせて一日当たり約400名ものお客さんが入っていたので、そのお客さん一人ひとりが少しでもチップを置いていってくれると、
次第には「チリも積もれば山となる」の法則で、一週間で相当な額に膨れ上がります。
当時、安月給な上に高い家賃と水道光熱費や生活費を支払って残る額は本当に微々たるもので、
この毎週いただける「副収入」が、うちらにとって生活の糧だったと言っても過言ではありません。
そこで、エクトールと俺が思いついたことは、
その「副収入」を増やすことでした(笑)
毎週もらえる額はまちまちでしたが、大体5,000ペセタから7,000ペセタ。
日本円で約五千円前後といったところです。
そのチップが、当時のルックラの従業員全員、
約40名に配られるのですから、相当な額です。
その「なけなしのお金」を持ってエクトールと向かった場所は、
『ビンゴ場』でした。
『Bingo Don Pelayo Barcelona』
前から目をつけていたビンゴ場です。
大きな扉のある入り口を抜けると、
ちょっと豪華な絨毯が敷き詰められた、怪しそうな雰囲気の広い会場の中に丸テーブルが会場いっぱいに並んでいて、そこを囲むように小金持ちそうな人がたくさん座っています。
店主、不覚にもちょっと緊張してしまいました。
なにぶん初めてだったもので(笑)
壁には、デジタルで現在のゲームの賞金が表示されています。
コンパニオンのお姉ちゃん達がチケットを歩いて各テーブルを回って売っています。
中にはかわいい子もいましたが、
コンパニオンっても『バニーガール』ではありません念のため(笑)
前方中央にメインテーブルがあり、透明なアクリルでできた大きな箱の中に、90個のボールがぐるぐると風で飛ばされていて、それが順番に機械によって選び出され、コンパニオンによって数字を読み出します。
チケットは六枚綴りでできていて、その六枚の中に1から90までの数字が15個ずつばらばらに入っています。
六枚のうち一枚だけを買うより、六枚綴りを1セット買ったほうが必ずどこかで数字が出てくるので、当てやすいといえば当てやすいですね、確率的にも。
そして、その一枚のカードの中のどれか一列が揃えば「Línea(リネア、列)」、
数字が全部埋まれば「Bingo(ビンゴ)」ということになります。
その六枚綴りを一組で買ってもいいし、その中の一枚だけとか、二枚だけとか、自分の好きな枚数だけを買うことができます。
確か、一枚300ペセタくらいだったような記憶がありますが、
ゲームによって値段も違ったりしていましたね。
もちろん、一枚が高い値段だと配当金も高いです。
当然、六枚綴りを買うほうが当たる確立が高いです。
ですが当然、自分の払う額も六倍になります。
うちらは二人で六枚綴りを買い、
『当たったら賞金は山分けにしよう』という条約を結んでいました。
初めてビンゴを体験した日は、読まれていくボールの数字を耳で聞きながら自分のチケットの番号を追いかけていくことができず、会場のいたるところにあるテレビ画面を見ながら番号を追っていました。
それが、次第に慣れてくると読まれている数字が自然と耳に入るようになり、自分にとってある意味いいスペイン語の勉強にもなりました。
賭け事を正当化しています(笑)
賞金は、そのときの参加数や一枚の掛け金にもよりますが、
大体リネアで10,000ペセタ、ビンゴだと60,000ペセタにもなります。
しかし、これがなかなか当たるようで当たらないんです。
当たり数字一つだけを残して、他の人に賞金を持っていかれたりすることは多々ありましたね。
そんな中、
初めてビンゴを当てたのは、
俺ではなくエクトールでした。
数字が残り一つになっても
『リーチ!』なんて普通言わないので、いきなりです。
俺の隣でさりげなく、
「Bingo」
と一言だけ言って、手を挙げるエクトール。
「え!? マジかよ!!」
その、
手を挙げた姿がなんともまぶしかったこと(笑)
もう一度言いますが、
数字が残り一つ前になっても「リーチ!」なんて言わないので、いつ誰が急に声を上げるか分かりませんから残り一つの時なんてかなり焦ります。
「残りあと一つ。出るか? 出るか!?」
会場がざわざわしてくるのでそれとなく『そろそろ誰か当たりそうだな』というのは判りますけど、そのときに自分の番号が全然揃っていないと悔しくてたまらないんですよ。
そうなったらもうそのゲームは捨てて、もうタバコに火をつけて次のゲームを待ちながら読まれた数字を自分のカードから見つけ、咥えタバコでなげやりな感じでめくります。
暇つぶしにコンパニオンのお姉ちゃんを眺めていたり(笑)
そして、ビンゴが出るとすぐにそれは近くに居たコンパニオンによって確認されて、場内に『ビンゴが出ました』とアナウンスが入り、賞金が渡されます。
エクトールが当てたときは
60,000ペセタを二人で割って、一人30,000ペセタの副収入。
貯金をしたり、生活費として使うどころか、
「よっしゃ!これからちょっと出掛けてパーッとやろうか!」
と、
エクトールのバイクの後ろに乗っかって、うちらは夜のバルセロナの街へと消えました。
とっておけば生活の糧となるのに(笑)
しかし、
あの日から
すっかり味を占めちゃいましたね。
週に一度のチップが入ったときには、いつからかジョルディや英ちゃんも含め皆でビンゴへ行くようになりました。
初めて当てたときのゲンを担ぎ、そのときにエクトールが頼んで二人で飲んでいたガス入りのミネラルウォーター「VICHY CATALAN(ニョスキにも置いてあります)」を、
グラスに氷をがっつり入れて毎回飲むようにしていました。
それだけ切実だったんですって(笑)
しかし、賭け事って魔物ですね。
大抵が無一文ですっからかんで帰ることのほうが多かったですけど(笑)
ですがある日、
英ちゃんと二人だけで行った時のこと。
ビンゴ場に入り、
『とりあえず』のつもりで最初に買った、六枚綴り一組。
「さぁて、今夜はどうなるかな?」
と思いながらカードをめくっていたら
英ちゃんがいきなり
「ビンゴ!」
「うそぉー!!」
なんと一発でビンゴが当たっちゃったんです(笑)
しかも、そのときは参加数も多く、
そのゲームの賞金が出ている電光掲示板を見たら、
『100,000pts』と、
それはもう、とてもまぶしい光を放っていました(笑)
二人で割っても、一人50,000ペセタ。
当然ここは勝ち逃げです(笑)
その後は二人で、
俺のバイクに乗って夜のバルセロナの街に消えて行きました。
スペインへ渡ってから
めちゃめちゃ仕事していましたが、
しっかり遊んでもいましたよ。
若い頃、先輩に言われたことを思い出します。
「いいか。仕事ができる人間ってのはな?遊びもすごく上手なんだよ。だから、いっぱい仕事したらいっぱい遊べよ!!」
はい。
俺もその道を行かせていただきます!(笑)
★★★つづく★★★