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――やっべ、忘れてた!――
あまりにも忙しい毎日を送っていたため、アルサークへ研修に行ける話などいつの間にか忘れていて、気が付けば、あれから一年もの月日が経っていたのです。
「それで留守電、なんて入ってました?」
「とりあえず連絡下さいだって」
「分かりました。すぐに電話します!」
そう言って、内山さんと電話切ったその日のうちにアルサークに電話をかけました。
「どうもすみません。実は今、違うところで仕事をしてまして…」
「それで、10月からだけど、来るの?」
「いや、ですからちょっと今、違う店で働いていまして、ここにしばらく残ろうと思うんです。すいませんが、もう少し後になってからということでもいいですか?」
「なんだって!!君が来たいって言うから、他にも何人もここに来たいって言ってた人を断ってきたのに、そういう話は聞き入れられない!」
1年間の間にこれくらいの会話はできるようになり、
聞き取れるようにもなっていました。
しかし。
はい。
「アルサークに勉強に行ける!」という話はあっけなく終わりました。
怒られました。
当たり前です(笑)
そんな、「願っても無いチャンス」を自分から蹴ってしまいましたからね。
アルサーク本人はもう忘れているかもしれませんが、
もしもどなたかアルサークで研修に行くような話があった場合、
万が一、この話は言わないほうが良いと思われます(笑)
「ルックラ」で働き始めて、「スペインでの仕事の楽しさ」を覚え始めていました。
今までのように、人に言われたことだけをこなすだけではなく、自分の頭で考え、順序を決め、自分のやりやすいように仕事を進める。
たとえ今のお店がどんなに忙しくても、それは「人に言われて進めるだけの仕事」ではなく、「自分のやりたいように仕事を任され」ているのは確かでした。
めっちゃめちゃに忙しかったですけどね(笑)
ルックラでの仕事がそういう意味で面白くなり始めたとき、
「別に有名な店に行かなくても立派に仕事ができるのかな?」と思い始めたのです。
「きっと、自分のやる気次第で人生どうにでもなる!」と。
でも、最高の食材を使った有名な店で働いてみたいという思いももちろんありました。
だからこそアルサークへも行ってお願いもしました。
ですが、
「大勢のコックがいる中で一日中同じ仕事をして過ぎてしまう一年」より、
「いろいろと日々新しいことを学べて、なにより今の店で一つのセクションを任されて仕事をさせてもらえる一年」のほうが、俺には何倍も得るものがあると思ったし、充実していると思いました。
それにいつか、日本に帰ってから「コックが厨房に四十人もいないと作れない高級料理」を作るということが、はたして自分の店を出したときに同じようにできるのか? と考えると、コックが二人や三人くらいで回すような小さな店をやりたいと思っている俺にとっては、それは少し難しいような気がしました。
こういう話は、きっと賛否両論かもしれません。
確かに、世界的に有名な店で働けばいい経験にもなるでしょうし、きっと自分の名声も高くなって有名になれるかもしれませんが、それは確実に、自分が持っている「夢」とは違っていたのです。
「たとえ小さな店でも、たとえ有名になれなくても、おいしい料理はきっと作れるようになる」と。
俺だって、若いときから有名な店で働くということには憧れましたし、正直、有名店で働いたことのある人のことはうらやましいと思います。
自慢だってできますしね。
もちろん、人によって考え方は様々ですが、俺はそこに価値観を見出さなかったんです。
今居る店でも十分に学べることはあるし、やる気があれば何でもやらせてもらえますから。
長い人生の中で「自分が納得できる」ものにめぐり合えば、
「どこにいても楽しく充実した人生が送れるんだ」という結論に至ったのです。
自分の決めたことに、迷いなんて全くありませんでした。
これが俺の「価値観」です。
そして俺は、
「この土地に、昔から伝わる郷土料理」をたくさん覚えて日本に持って帰ろうと決めました。
アルサークさんごめんなさい!
★★★つづく★★★