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9月に入ってから、ジョアン・ピケからエクトールに電話がかかってきました。
するとエクトールは、
「テツ、なんだかバルセロナの店のオープンが遅れてるんだってさ。
そこでジョアンがね、別のレストランをジローナに持ってるんだけど、
『良かったらテツはそれまでの間、そのお店でしばらく働かないか?』だって」
「なぜもう一つのレストランか?」というと、
前にエクトールと行ったレストラン「Cal Rei(カル レイ)」は、4月から10月までの半年だけ営業している、言わば「リゾート地のレストラン」なので、もう今年の営業は終わってしまうので、もう一つのレストランへと打診があったのです。
早速、俺からジョアン・ピケのところに電話を入れて自分で確認をしてみます。
「エクトールから聞いたか? バルセロナの店は年末にオープンすると思うから、それまでジローナのレストランにおいでよ。給料は、最低賃金だけど払うから」
「そうですね、ちょっと考えてすぐ返事します」
『ジローナのレストラン』とは、
前回ご馳走になった店、ヌエバ・コシーナタイプの「カル レイ」ではなく、別にもう一軒ジローナの街の中にジョアンが持っている、カタルーニャ地方の郷土料理を出しているお店でした。
「テツ、どうだ? お金もらえるんだろ? 今行ってる店より良いと思うよ?
カタルーニャ料理の店だし、この店では日本料理なんてやる必要もないだろ?」
と、エクトールは俺にジョアンのお店で働くことをしきりに勧めます。
「そうだよね。でも、俺、あっちに住むところもないよ?」
「それじゃ、ちょっと周りに聞いてみるよ!」
そんなのすぐに見つかるわけないよと思っていましたが、
数日後エクトールから、
「テツ、部屋が見つかったよ!アグラエの弟がジローナに住んでて、そこでも一部屋空いてるんだって。お前、ツイてるなぁ!!」
「え、ホント?」
日本語を勉強している「フォルケー」の奥さんの弟が、ジローナに住んでいたのです。
信じられないような話ですが、ホントでした。
自分でも信じられませんでしたからね。
そんなにタイミングの良い話なんてあるのかいな?と思っていたくらいですから。
全ての道が一本につながっているような、そんな感じがしました。
そしてその次の週末、いつもどおりに「サジョリダ」へ行きます。
皆と世間話をしているうちに、自然と俺の口からこの間の話を始めていました。
「実は先週、ジョアン・ピケの店に行ってきたんだ。それで、今度バルセロナで新しく、彼がオープンするレストランの話を聞いて、そこに働きに来ないか?って言われたんだよ」
「え!? それでテツはどうするの?」
「うん、いろいろ考えたんだけど、やっぱりこのままだとここでは長くは続けられそうにないかなって。あっちでは労働許可も取ってくれるっていうから、ジョアン・ピケの店に行こうと思うよ」
「待ってよ!それなら俺だって給料も払うし労働許可だって取ってあげるから!!」
実際、それは無理だろうと思いました。
町場の小さなレストランが大きなレストランに勝てるわけがないですし。
それに今までだって、彼らからお給料をもらっていたわけでもないし、
店がすごく忙しかったわけでもありません。
サジョリダは勉強するにはもってこいの環境ですが、
これから先のことを考えると、ジョアンのレストランへ行ったほうが良いと考えたのです。
どっちがいいと聞かれれば、やはりちゃんと労働許可を取って、安心して働けるほうがいいに決まっていますし、その後に「アルサーク」にも行きたいと思っていたからです。
『不法滞在で強制送還』なんて、笑い話くらいにしかなりませんから(笑)
マリア・カルメンにも事情を説明して、二人に納得してもらいました。
「それでテツ、いつから行くの?」
「できれば、行ける準備が出来次第すぐにでも行くよ。でも、ここもちゃんと終わらせたいし、急には辞めないよ」
そして、9月いっぱいで、「サジョリダ」を出ることになりました。
早速ジョアンにも電話をして、10月からお世話になることになりました。
さて。
ジローナにアグラエの弟が住んでいても、当然俺は彼のことを知りません。
やはり一度彼らにも会っておいた方が良いと思い、時間を作って一人でジローナまで行ってみました。
住所も教えてもらっていましたが、やはり初めての場所。
予想通り思いっきり迷ってます(笑)
迷った挙句にどうしようもなくなって、
アグラエの弟ジョルディに直接電話をかけ、迎えに来てもらいます。
最初から電話しとけって?(笑)
しばらくすると向こうから、誰かが歩きながら俺に向かって手を振っています。
うちらの距離は百メートルくらい離れていたにもかかわらず、俺に今まで会ったこともなかったのに、ジョルディは俺に向かって笑顔で手を振っていました。
後で彼から聞いた話ですが、
「よくあの距離で俺だとすぐに判ったね?」と聞いてみたら、
「あの町で中国人なんてそんなにいないから、すぐに判るよ!」
なんて、冗談交じりに笑いながら言っていました。
俺がそれ言われるの嫌いだって事くらい知ってるくせに(笑)
そしてジョルディにマンションまで案内してもらい、
同居人のマルクとジャウマ、
「それじゃぁ、来月からよろしく!」
軽めに話を済ませ、バルセロナまで戻りました。
長い夏休みも終わり、学校は新学期を迎えました。
俺は今回の試験にも合格して進級して4級に上がることができましたが、
ジローナに行くことが決まっていたので学校を中退することになりました。
ジローナに行く前日、今まで一緒に勉強してきたクラスメートや日本語を勉強している友達を部屋に呼んで、軽い日本食でもてなしたお別れパーティーです。
「招待=お金かからない」ということもあり、
気がついたら4LDKのマンションは30名くらいの人であふれかえっていました。
知らない間に、気がついたら結構な数の友達ができていたんですね。
嬉しい限りです。
実は、
この『お別れパーティー』にもタイスが来てくれたのですが、
なんと、ここでも俺は告白できずじまい。
明日からジローナだっていうのに、全く男らしくありませんね。
というワケで
俺は胸に詰まった物が取れないまま
ジローナへ向かうことになったとさ(笑)
★★★つづく★★★