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俺が住んでいるマンションの同居人の皆とも、一緒に生活をしながら次第に打ち解けて仲良くなっていき、彼らとは週末前、毎週木曜日になるとこぞって夜の町に繰り出しました。
この町には大学があり、学生が大勢住んでいて、金曜日の授業が終わると学生達は各々の実家に帰って週末を過ごすため、木曜日の夜が町に繰り出す日となり、一週間のうち一番活気があります。
このほとんどの学生たちが実家に帰る週末、なぜか彼らのバッグがパンパンになってはち切れんばかりなのですが、
「親に洗ってもらう洗濯物」だと判るにはそう時間がかかりませんでした(笑)
それはさておき。
ほとんど毎週木曜日は、俺も仕事が終わってから彼らと近くのバルで何杯か酒を飲んで、そのあとは「ディスコテカ(日本で言うクラブ)」へ踊りに出掛けます。
そして、帰るのはいつも明け方の5時とか6時とか。
それから皆で、部屋でパスタをボイルして食べたり、そのまま朝まで飲み続け大宴会になって、たまに翌日に大寝坊したり(笑)
そんな楽しい日々を過ごしていましたが、やはりいろんな所に出かける時は、周囲の視線が気になるんですよね。
俺の勘違いや気のせいならまだしも、
目の前で俺に向かって、
しかも、酔っているから大声で、
「あ、中国人がいるぞ!!」
「テツ、ああいう奴らは放っとけよ!」
いいえ、放っておけないんですねこれが。
こんな感覚は日本で味わったことがありませんから、とにかく腹が立ってしょうがないんです。
スペインや、他の西洋圏の外国でこんな経験をされた方、結構いるでしょう。
俺もそのうちの一人です。
思わずカッとなって、そいつを思い切りぶん殴ってやろうと
「俺は日本人なんだよ!!!」と、
怒鳴りながら向かっていくと、
同居人の皆に止められます。
「俺の気持ちなんて分かんないのに、そんなこと言うなよ!」
そう言いたかっけど、彼らには何も言えません。
グッと堪えるしかありませんでした。
どこに行っても周りから不思議そうな目で見られ
笑いながら指をさされ
すれ違いざまに「チノ、チノ(中国人だ、中国人だ)」と言われ。
こういうことは、
某旅行ガイドや留学ガイド本には間違っても載っていません。
確かに俺の顔は「西洋的」ではなく「純和風」ですが、見た目が違うだけでここまで馬鹿にされるとは、スペインに来る前はこれっぽっちも想像していませんでした。
何にも悪いことしてないんですけどね。
これを書いてるだけで腹が立ってきます(笑)
気が付くとジローナへ来てあっという間に二ヶ月が経ち、町はクリスマスシーズンに近づいていました。
未だにバルセロナのレストランの話は進んでいるようには見えず、ジョアン・ピケから、
「来年になっちゃうかもなぁ。でも、それまでこの店にいても大丈夫だからな!」。
「バルセロナの店ができるまではここにいてもいいぞ」ということです。
実際、ここの店の仕事にも慣れてきたし、皆とも仲良くやっていたし、何より自分がやりたかった料理の勉強ができたので、特に不満はありませんでした。
自分の手の空いているときはいつでもメモを片手に片っ端から聞いて回ったり、実際に火を使わせてもらったり。とにかく毎日が充実していました。
最初にジョアンが言っていた「最低賃金」も、日本円にすれば十万円くらい。
だけど、住んでいた部屋はバルセロナより安く、四人でシェアしていたので格安だったため、残ったお金の大半は、家の近くにある本屋で買う料理本へと消えていきました。
本屋のおばちゃんとも仲良くなり、いつも顔を出すと新しい料理本を俺に紹介してくれます。
よほどいいお客だったんでしょうね、俺(笑)
今年もあっという間に過ぎて年末になり、毎年恒例のブドウを食べる日が近づいてきました。
12月25日、スペインでは家族揃ってクリスマスを祝います。
仕事などで家族揃ってクリスマスを祝えないと、寂しがる人もいるくらいです。
この日は、キリスト教の人がキリストの誕生を家族そろってお祝いする日。
だからこの日、スペインにある大抵のレストランは暇です。
「イヴ」なんてありません。
クリスマスの翌日、12月26日になると前日に家で食事をした家族はレストランへ出て「カネロニ」を食べます。
この日の聖人「エステヴァン」を祝う日らしく、この日はカネロニを食べるみたいです。
カネロニとは、後で詳しく説明しますが、グラタンのような料理です。
前日(25日)の食事が重いため、翌日は軽い食事をするためにこれを食べるのでしょうか。
でも、俺にはこの料理すら重たく感じます(笑)
クリスマス時期に「ピエジャ」ではタルト作りに大忙しで、ここではカネロニの具(お肉と野菜のペースト)を作って、四角く平たいパスタをボイルして具を巻いて、それと別にベシャメルソースを作るのに大忙しでした。
この「カネロニ」という料理、
肉と野菜のペーストを巻いたカネロニにベシャメルソースをかけて、チーズを振ってグラタンにします。
暖かい料理なのに、なぜか冷たい料理担当の俺がその料理を出すことになっていたから、その日はどうしようもないくらいカネロニに追われます。
さらに当日は、
ほとんどのお客さんが「カネロニとサラダ下さい」というオーダーをします。
両方とも俺の担当じゃんか(笑)
レストランでは「年越しメニュー」を出していて、
12時になると、新年と共にお客さんとレストランのスタッフが一緒になってブドウを食べるというイベントがありました。
スペインでは、クリスマスよりこの日の方が盛り上がっています。
日本と逆ですね。
この日ばかりはと、皆でワインを飲みながら仕事をしています。
モロッコ人も一緒になってお酒飲んでます。
あれ?(笑)
この店では、ブドウを食べる際に教会の鐘を聞くのではなく、調理場にある、カタルーニャの郷土料理の代表的な炊き込みご飯「アロス」に使われる鉄鍋を叩いて鐘代わりにして、それを聞きながらブドウと食べようというのです。鉄鍋を硬いプラスチックでできたヘラで叩くと、なんとも教会の鐘に似たような音が出ます。
「カンカンカン!」と試し鳴らしをしながら、
「よし、これで行こう。テツ、お前もこれ持って行って来いよ!!」
と、調理場のムードメーカー、ホセは俺に言います。
俺は断りました。
「そんなの気にするなよ、年に一度なんだから。ほら!」
と言って、鍋とヘラを渡されますが、
「いや、俺はここでブドウを食べてるから、ホセが行ってきてよ」
どうしても、
今までにあったいろんなことを考えてしまい、正直言って外に出る気になれません。
ひょこひょこと出て行ったはいいけど、
「チノ!チノ!」なんて馬鹿にされたくなかったんです。
表に出て「鐘」を鳴らしたいんです。
「あ、行かれちゃった」
俺もファイサルみたいに普通に出て行けば良かったのに。
そんなところで急に頑固になってしまった自分を後悔しました。
我慢できなくなって、帰り道に、自分の思っていたことを、今自分が話せる言葉を使えるだけ使って彼に全部話しました。
まさか自分にそんなことが起こるとは、全く想像もしていませんでした。
どうしたらいいのか分からなくて、
とにかくいつも悔しくて悔しくてたまらなかった。
ファイサルにそんなことを話し始めたら、急に涙が出てきて止まらなくなって、
大声を上げて泣いていました。
今まで心の中にしまっていたものがそのとき全部出てしまい、
とにかく悔しくて、悔しくて涙が止まりませんでした。
オチではありませんが、
その時、道で大声出して泣いてても、すれ違いざまに「チノ」って呼ばれてた
そんな、スペインでの四度目の年越しでした。
あ、
今ではすっかり笑い話になっていますのでご安心を(笑)
★★★つづく★★★
何事にもめげないようにお見受けしていましたが、幾多の困難を乗り越えていらした故の強さだったのですね~。尊敬です。
ニョスキのぶれない美味しさの背景を垣間見られてとても貴重なブログです!
今では「何事もめげないように」していますが、
この先のブログでは、もっともっと大変なことになってしまうので、これからも少しずつお話させていただきます。
もちろん今では全て笑って話せる事ですので、これからも楽しみにしていてくださいね!
ていうか、
本当に全部話しちゃっても大丈夫なんですかね?
そういう人をあまり聞いたことがないもので(笑)