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「せっかくだから一杯だけ飲んで帰ろうか?」
俺がモンセのことを以前気になっていたんだ、という話を車の中でネタにしてみます。
完全に自虐ネタです(笑)
「なんでもっと早く言ってくれなかったの?」
と、モンセ。
「は?」
皆さんもお分かりの通り、俺は一歩遅かったんです。
別に一ヶ月だけしかいないつもりだったし、そのあとはバルセロナに行くし、そこで話を大きくしてもあとできっと無理が生じると。
僕ももう良い大人ですから(笑)
「もう少し早く言ってくれればね。でもしょうがないよ。こういうこともあるよね」
と、モンセは俺にもたれかかって頭を俺の肩に乗せながらそう言います。
「あ~ぁ、俺はなんでこう、一歩遅いんだろう!」
今更、モンセの頭が俺の肩に乗っかっても胸はときめきません。
ただ俺は凹むばっかり。
モンセ、肩が重いってば(笑)
そこでビールを何杯か飲んで部屋に帰って、その晩はふて寝ですよ、ふて寝(笑)
なぜかと言うと、その日はバルセロナの新しいレストランで働くスタッフの「初顔合わせ」だったから、前日のうちにジローナへ戻っていたのです。
モンセに送ってもらってね(笑)
バルセロナ港の横にある、新しくできた商業ビル
「World Trade Center Barcelona(ワールドトレードセンター バルセロナ)」。
船をデザインしたような、四つの棟で出来たビルです。
北棟の一階にその新しいレストランはありました。
名前は「Ruccula(ルックラ)」。
ルッコラのスペイン語読みです。
俺はエクトールと待ち合わせて、ビルへ向かいます。
午前10時にレストランの事務所に皆が集まって、一人ひとり軽い自己紹介を済ませた後、新しい職場となるレストランを案内してもらったのですが、まだ工事中のため、砂埃舞う中、皆ドロドロになっての見学でした。
「うわ、でかっ!」
「これ、あと一ヶ月でできると思う?」
「いや、多分無理だろ」
周りに聞こえないように、そんな会話をエクトールと小声で交わします。
店内や調理場を案内してもらいましたが、客席も厨房も、とにかくでかい。
早速ジョアン・ピケに聞いてみます。
「この店、どれくらいのお客さんが入るんですか?」
「一応、250席だね。個室が2つ別にあるけど」
「は? 250席!?」
その瞬間、すぐにエクトールと目が合い、そのときお互いに目で、
「おいおい、ほんとに大丈夫かよ~」
とアイコンタクトをとりながら、ひたすら苦笑い。
だって、250席ですよ!?
日本にそんなレストランがあったら、僕に教えてください。
デパートの屋上の大食堂並みの、スペインレストランですからね?(笑)
とにかく、
俺はそんなレストランは今まで働いたことがなかったので、
ちょっとだけ、
いや、かなりビビってました。
この「250席の店」で働くようになったら、エクトールと一緒に店の近くに部屋を借りようという話になっていたので、近くの不動産を帰りに見て回りました。
エクトールが一人で先に探していたけど、なかなかいい物件が見つかりません。
二人で半ば諦めかけていたところに、電柱にあった張り紙を見つけます。
「バダル 駅近く 3部屋+リビング+キッチン 85,000pts(ペセタス)」
二人してその電柱に脚が止まりました。
「お! ここにするか? 家賃はちょっと高いけどさ、二人で割ればなんとかなるよ。部屋も3つあるけど、そのうち誰かもうひとつの部屋を借りる人を探せばいいよな?」
今まで住んでいたバルセロナの部屋は、とにかく我慢できないくらい汚かったんです。
前にも話しましたが、ゴミ袋が廊下に並んでいたり、誰も部屋の掃除をしなかったり、洗濯機が動かなくなってもそのまま放置されて誰も直しに来る気配もなかったり。
そんな話をずっとエクトールから聞かされていたので、「それじゃ、うちらだけで別のところに部屋借りようぜ!」となったワケです。
早速エクトールが電柱にあった張り紙の番号に電話をかけて、その日のうちに大家さんに会い、物件も見せてもらって詳しい話はまた今度に、という話ですぐに決めてきました。
場所は、バルセロナサンツ駅から、「カンプノウ」というバルサのサッカークラブスタジアムの近く。地下鉄の「Badal(バダル)」という駅から歩いて三分くらいのところにある、古いマンションがひっきりなしにある住宅街の一角のマンションの五階の部屋でした。
エレベーターも付いていなくて多少古いイメージがあったけど、部屋に入るとリフォームもされていて、住みやすそうな場所です。
「これでなんとかいいスタートができそうだな!」
エクトールが「今まで見た物件の中で一番良かった」というので、即決でした。
さてさて。
翌日、パラフルジェイのホテルに戻ると、どうもジョアンの様子がおかしいんです。
俺を妙に避けてくるし、口も聞いてくれません。なぜかモンセも俺に気まずそうな顔をしています。
「あ、やっぱりそうか!」
俺の思った通り、モンセは先日のことを彼に話していたんです。
モンセは普通に彼にこの前の事を話したらしいのですが、彼が相当なまでに激怒したみたいですね。
そう読み取りました、この空気(笑)
そう。
彼は極度の嫉妬男でした。
だから、「モンセは俺に話をしてこなかった」というより、「彼が目の前にいるので俺に話しに来れない」という状況です。
とにかく彼は、俺が今までに出会ったことのないくらいのヤキモチ妬きで、この日を境にうちらの仲がどんどん悪くなっていったのは言うまでもなく、というか彼は俺に全く口を聞いてこなくなりました。
もう、しんどいですねこういうの。
それがまだ一緒の部屋で寝泊りするんだから、さらにしんどい(笑)
彼とは一緒に飲みにも行かなくなり、ついには影で俺の悪口まで言うようになりました。
でも、ここで大人気なく怒ってもしょうがないので最後まで気にせず、今月いっぱいここに居ようと思っていたけど、やっぱりそういう奴が俺の隣で寝ているのが気に入らなくて、予定日より一日早くそのホテルを出る事にしました。
ホテルのオーナー夫婦には、
「バルセロナの引越しが一日早まっちゃって、すいません。」とだけ伝えておいて。
まぁ、そういった噂話には気が付いていたのかもしれませんが。
とにかく、このホテルの皆にはとても良くしてもらっていました。
まだこの事件が起こる前に、「テツはタダで働きに来ているから」と、料理の本を一冊、ホテルの皆からの寄せ書き付きでプレゼントしてもらったりと、皆とも仲良くやっていただけに、残り一日で出ていってしまうのはすごく残念でした。
あと一日、ちゃんと最後まで居て、きれいにお別れをしたかったんですけどね。
とにかく彼のことでは気分が悪かったけど、同時にこんなくだらないことで気分を悪くする自分にも腹が立っていました。
そして、一日早まった最終日。
荷物をまとめて無言で部屋を出ようとすると、ジョアンは俺の目も見ずに一言。
「お前は、人の女性に手を出すような奴なのか?」
「手なんか出してねぇよ。思ってたことを伝えただけだろ?」
「まぁいいよ。今後一切、俺の事は思い出さなくていいからさ。忘れてくれ」
「言われなくてもそうするよ」
と、俺はすぐに部屋を出ました。
これくらいのスペイン語会話はできるようになっている自分にやや感心(笑)
そして、すぐさまホテルの外にあった公衆電話からエクトールに電話。
「ちょっとエクトール、聞いてくれよ~!!」
それを聞いたエクトールは、電話の向こうで大笑いです。
苦笑いしていた俺も、ここは大笑いするしかありません(笑)
後で聞いた話ですが、やっぱり彼は相当な変わり者だったらしく、その後ホテルのオーナーともめ事を起こして、あれから間もなくホテルをクビになったそうです。
そんな奴に腹を立てた俺も情けないですね、ホント大人気ない。
もう少し人を見極める力をつけないとなぁ、と思いながら一人ジローナへ帰りました。
だけど、今となってはこれも忘れられない思い出のひとつですよ。
このホテルの皆からもらった料理の本は、今でも俺の宝物です。
その本の寄せ書きには、例の彼、ジョアンからの一言も。
「お前にとって、このカレージャ(パラフルジェイの地域の名前)での日々を忘れられない思い出としてくれることを願ってるよ! 永遠の友人へ! ジョアンより」
と書いてあります。
おぅ、当たり前だよ。
お前の事ももちろん忘れないさ!!(笑)
★★★つづく★★★